金子玄之

株式会社Gift
代表取締役  金子玄之氏

PROFILE

「東方Project」「ニトロプラスキラル」「薄桜鬼」などの
人気コンテンツのフィギュア、ぬいぐるみ等の企画、製造、販売を行うメーカー『Gift』。

2014年12月28日〜開催の「コミックマーケット87」では、西館4階の
企業スペースno.412にて多数の人気タイトルグッズを販売予定!

http://www.gift-gift.jp/

「商品は知っているけど作っているメーカーのことは知らない…」「どんな人がこの商品に関わっているのだろう…」
そんな商品を製造している企業や人たちにフォーカスを絞って紹介してみようということで始まったこの企画。第一回目のゲストは、今、注目のフィギュア・グッズ製造メーカーの「株式会社Gift」代表取締役の金子玄之氏にお話を伺いました。
常にブレることのない“ユーザー主義”へのこだわりには、その柔らかそうな人柄とは裏腹に、誰にも譲れない強い信念を持つ金子氏。
キャラクターグッズを愛するすべてのユーザーに読んでいただきたい、作り手の想いに触れられるインタビュー!

[スピーカー]
株式会社Gift 代表取締役 金子玄之氏
株式会社カフェレオ 代表取締役 内山田昇平
取材日:2014年11月13日 構成:里見亮(有限会社日本産業広告社)
場所:ブックマーク浅草橋

“贈りもの”のような、一つ一つ丁寧なものをお客様にお届けしたい

内山田昇平(以下 内山田):栄えある第一回目のゲストは、今、大人気メーカーのGiftさんということで。

金子玄之氏(以下 金子):ありがとうございます。人気かどうかわからないですけど(笑)

内山田:Giftさんって、ぬいぐるみメーカー?それともグッズのメーカー?

金子:フィギュアメーカーと言ってますね。でも目指すところは何でもできるメーカーになりたい。フィギュアもぬいぐるみもグッズも、すべてバランスよくやっていきたいのがホンネです。

内山田:そもそもGiftという社名の由来は?

金子:TVで流れていた曲を聴いていて…そのタイトルが"Gift"だったんですよ。で、その意味合いが「贈りもの」以外に、「天からの授かりもの」という意味もあるらしく、なんかいいなぁと思って。会社を設立するに当たって、贈り物のような一つ一つ丁寧なものをお客様にお届けしたいという願いを込めて。でも一番はわかりやすい名前にしたかったですね。

内山田:もともと金子さんって、フィギュアとか好きな人だったんですか?

金子:知り合いが秋葉原でフィギュアの仕事をしていて、それで誘われて東京出て来たのですが、正直フィギュアというものを知らなくて(笑)PVCとかレジンとかコールドキャストとか、区別のつかない状態だったけど、自分の環境を変えたいなぁと思って出て来ました。

内山田:出て来る前は何やっていたんですか?

金子:一番初めは銀行員やっていて、その後いろいろと…(笑)私は、一所に留まるのが苦手なもので…。

内山田:まっそれ、経営者の典型的な素質ですからね!

2人:

金子:社長はわがままな人多いですもんね!

内山田:そうそう(笑)

喜んでいただくのは誰か?

内山田:Giftさんを設立して一番初めに手掛けた商品は?

金子:一番初めはぬいぐるみです。フィギュアをやっていたんですが、フィギュアは時間もお金も掛かるので、その間に何か別のものをやろうと考えてぬいぐるみを。その第一弾が、東方Projectさんのぬいぐるみだったんですよね。

内山田:それって売れましたよね!最初からヒットを出したってすごいことですよね。

金子:おかげさまでご好評いただきました。たまたまいろいろな要素が重なってですけど。当時、東方Projectさんって、版権の許諾が取りやすいとは言えない状況だったんですよね。そんな中、いろいろな方にご協力いただいて…。その結果、公式に許諾を得たグッズを作ることができたんです。それが当時では珍しいということでみなさんに注目していただきました。

内山田:お客様がしっかりファンになってくれたというのが大きいですよね。

金子:そうですね。ほんとありがたかったです。そのシリーズも20体以上ロングセラーとして続けさせていただいております。

内山田:新商品を作る際など、何か特に気をつけている点とかってあります?

金子:よく「自分が欲しいもの作らなくてどうするの?」なんて言われるんですが、基本的に自分が欲しいものよりお客様が求めているものを作りたいと思っています。私の場合、いろいろな仕事を経験して来て、どの業界でもお客様が欲しないものは売れない、とすごく感じていました。だから喜んでいただくのは誰か?自分ではなくお客様に喜んでもらえることが一番と常々思っています。

内山田:原理原則ですよね。今の話って企業理念にも通じます?

金子:そうですね。お客様が喜んでいることが自分の喜びにもなりますから。

内山田:金子さんに初めて会ったとき、「会社が軌道に乗るまでは休まないんです」と言っていたんですよ。それすごい衝撃的だった!この人、ストイックだなぁって。野心を隠せないというか、目つきが鋭かったことをよく覚えてます(笑)

金子:目つきは悪いだけですよ(笑)当時は「休んだら負けだ!」と自分に試練を課していたんですよ。今考えると意味があったのか?と思うんですが・・・。2年半経って、軌道にのったかわからないときに休んでしまったのですが、それが嫁さんとのデートだったという(笑)

内山田:へぇーそうなんだ!やっぱり女性の力はすごい!

金子:これは休まざるを得ない!って(笑)

「このキャラのぬいぐるみ作ってください!」ほんとにあれはうれしい

内山田:将来的な構想ですが会社をどんどん大きくしたいんですか?

金子:今の規模でその時代のニーズに応じてやって行きたいなと思っています。最終的にはスタッフや私が、定年まで働ける会社にするのが究極の理想ですね。よくテレビとかで会社紹介として入社50年目の人のインタビューを見ると、それってほんとすごいな!と思うんですよね!「長く働ける」ってすごい!!と。長く働いている方が辞めない会社って、組織としてすごい!と思うんですよ。

内山田:いるよねー。地方の工場に勤めるお母さんとか。あれってすごいよね!
では、今までの7年間で岐路みたいなことはあったのですか?

金子:ぬいぐるみがまったく売れない時期がありましたね。正直、その時期はぬいぐるみ造るのを辞めようとまで思ってました。ただ、その時はグッズ市場がだんだん盛り上がりはじめた時期でもあって、いろいろなメーカーさんも参入して来たのを感じていたので、他社さんに負けない特色を出さないといけないと思ったんです。そのとき改め考えてみると、「Gift=ぬいぐるみ」というイメージがお客様や版元さんにも芽生えはじめていたので、これは辞めたらもったいないと、考え直しました。ぬいぐるみの造り方にしろ、ロットにしろ、どういうものが売れるか?とか、販売方法とか、とにかく考えましたね。

内山田:考え直したことによって、セールスは変わりました?

金子:変わりました。今は「やる意味」というものが出てきました。

内山田:「やる意味が出る」ということはお客様が待っていてくれるということ?

金子:そうです。弊社がどのキャラクターをぬいぐるみにするかを楽しみに待ってくれているように感じます。よくお問い合わせで、「このキャラのぬいぐるみ作ってください!」というお声をいただけるようになりましたね。

内山田:あぁ、それは嬉しいですよねー

金子:ですね。ほんとにうれしいです。こういう言い方したらたくさんご要望が来ちゃうかもしれないですけど(苦笑)。ご要望はいただきたいですね。イベントとかで私を見かけたら声かけてほしいですし、スタッフにでも構わない。ご要望いただくのはスタッフの励みにもなっています。

内山田:買ってくれるだけでもうれしいのに、「出してくれてありがとう」なんて言われたら、メーカーとしてほんとに嬉しいでしょうね

裏面のパッケージの表記を見ないんです。どこが作っているか?は気にしない。

内山田:さっきの話もそうだけど、Giftさんの継続し続ける力って、業界の中にも影響あると思いますよ。卸業やっているといろいろな商品を目にする機会があるけど、Giftさんははっきりしていると思う。

金子:会社作った頃の話なんですが、店舗でお客様が商品を選ぶ時、裏面のパッケージの表記をあまり見ていないのかな?と感じたんですよ。どこの店舗で買うかは考えるが、どこが造っているか?あまり気にしていないのかな?って。

内山田:うんうん

金子:特にグッズって安価だから。フィギュアのように高価なものは、このブランドは信用できるから買おうとか風習はあったんですが…。そんな状況の中、グッズという分野でGiftというブランドを広めて行くか?は、常に考えてきたというのはあります。それが他社様との差別化になると思いますし。いつか「Giftだから買おう!」っていうようにブランド名を気にかけてもらえるようになりたいですね。まだまだだけど。

内山田:個人としての目標は?

金子:この業界の中で商売の仕方をちょっとだけ変えてみたいとは思っています。ものや情報が溢れ過ぎていて、お客様から「ああ、出てたんだ」というお言葉をよく頂きます。ただ、私としてはその言葉をあまり聞きたくはないので、私たちが造ったものを皆様に届けられるようにしたいと思っています。業界を変えるとかではないんですけど。

内山田:いくらいいもの作ってもユーザーに情報が届かなかったり売り場に並びきらなかったり。そういうのってある意味みんな不幸ですよね。

金子:変えて行かないとですよね。

内山田:すごくユーザーに対して真面目に向かい合ってますよね。「Mr.ストイック」だから(笑)

金子:みなさんに応援して頂いているので。しっかりとしたものや情報を提供する義務があると思うんです。「なんでもいいから売れればいいや」と思いたくないですね。

内山田:お客様に受け入れられるようになった理由は、何だと思っていますか?

金子:弊社が妥協せずに商品を出し続けている、というのを感じてくれているからかな?私たちの熱意が。みなさまに伝わりはじめている気はしますね。

内山田:僕ら卸業は取り扱う商品が膨大だから推奨していく商品を選択していかないと右から左となってしまいます。その中でGiftさんの商品は、セールスポイントが明確になっているから売りやすいし扱いやすい。明確にしていくって重要です。

金子:この数年でグッズメーカーさんが増えて、売り場はスペースが限られているから、生き残るには今厳しい状況です。

内山田:またサイクルも早いですしね。

金子:ええ。数年前に比べて全てのサイクルが早くなりましたね。
ただ弊社の方針としては、流行に左右されないようにしたい。売れそうだからその流れに飛び移ろうというのは体質的にできそうにないです。

内山田:それも支持されているところですよね。大切なところ。

金子:最近のグッズメーカーさんを見ていると、すごい数のアイテムをリリースされていると感心してしまいます。その方法はこのサイクルの早い時代に合った方法だと思います。ただ、弊社にはそのスキルは無いですし、その方法に追随しようとは思わないですね。GiftはGiftの方法でやっていくしかない。その方法で自社の強味を生かして、いろいろな商品を提供していきたいと思っています。

内山田:ユーザーの人たちは大変ですよね。がんばっていると思う。その中で流行に乗り切れない人たちもいると思うんですよ。そういう人たちにとって、Giftさんの考え方は根付くのでしょうね。

金子:だと嬉しいですね。

内山田:今、注目しているタイトルは?

金子:全てのタイトルです!ただ、その中でも弊社がグッズを造りはじめた頃からお付き合いをさせて頂いているオトメイト様やニトロプラスキラル様に関しては注目をしています。可能であれば、両社の全タイトル&全キャラクターを商品化したい!と思っていますしね。

内山田:それ、載せていいの?

金子:いいですよ(笑)

いやほんとに、大変だけど楽しいですね。

内山田:では、直近のイベント告知などは?

金子:12月の13日、14日に、浅草橋にある「Gallery Gift」というスペースでオトメイトさんと、ニトロプラスキラルさんタイトルの弊社グッズを販売するイベントをやります。そして年末のコミックマーケット、年明けにもいろいろとイベントが続く予定です。ただ、イベントばかり続くのでスタッフが大変なんですよ。イベントは「こういうことやりたい!だから出展してみよう!!」というような私のわがままな部分が大きいので・・・それによく応えてくれてると思います、スタッフは。

内山田:羨ましい。でも大変だと思います。スタッフさんは(笑)

金子:やる!やっぱりやめる!卓袱台ひっくり返して、元に戻す!みたいなことばかりしていますしね(笑)

内山田:いいんですよ。それが社長だから!

金子:後から、「みんなごめんね」って(笑)

内山田:結構考えますもんね。意外と繊細なんですよね、社長って(笑)

金子:いやほんとに、大変だけど楽しいですね。あと、今スタッフがプライドを持ってやってくれているのが嬉しいです。一つ一つの商品に愛情をもってやってくれているんだなと感じます。「このデザインだと嫌なんでもう少し時間ください」とか言ってきてくれますし。仕事に誇りをもってくれているんだと思います。だから中途半端なものを商品として出したくない。という気持ちが強くなっています。

内山田:売れるものを作るのが先か?いいものを作るのが先か?まあ、両方なんでしょうね。きっと。売れたからよりいいものを出したいっていうこともあるし。あと金子さんって、スタッフをよく褒めるよね?

金子:だって、できないですもん。私じゃあ。

内山田:うん、わかりやすい。いないと困る。

金子:ええ、困る(笑)たまに、良い意味でとんでもなくいいものもの出てくることもありますしね!本当にびっくりするようなものが出てくる時があります。「すげーよ!君天才だよっ!」って(笑)

内山田:社内からすごいと思えるものが出てくるのはいいですね。いろんな意味でGiftさんって今ノッてるし、力強いし。お互いの事務所も近いし(笑)一回目はこういう人とやっておかないと(笑)

金子:(笑)ありがとうございます。

だからこそ、「好きだから買う」「買って嬉しい」そう思っていただけるような展開をして行かないといけない

内山田:業界に思うこと、ありますか?

金子:う~ん、特にないですね。ただ、グッズ業界に関して言えば「商品をお買い上げ頂けるのは誰か?」ということを考えた展開をした方がいいのかな?とは感じています。現状業界自体にお客様不在な部分があり、「売り上げが良ければいい」という風潮があるように感じます。

内山田:まさしく。

金子:私たちは営利を追及している企業なので「売上追及」というのは正しいです。ただ私達グッズメーカーは日用品を売っているわけではないんです。絶対買わなければいけないものではないんですよ。私たちの商品って。

内山田:付加価値ビジネス。

金子:そう。だからこそ「好きだから買う」「買って嬉しい」そう思っていただけるような展開をして行かないと、この業界自体にも良くないとは思っていますね。一人でも多くの業界関係者がそう思ってくれたらいいなぁと思いますね。私が言ったら偉そうだけど(笑)

内山田:いやいや、そのとおりだと思います。

金子:弊社としては、ご購入頂いた皆様や許諾を頂いた権利元様に喜んでもらえるものを造り続ける。これを目標にしていきたいです。

内山田:すばらしい。大震災の時にね、うちも物資を送ったんだけど、実は送れるものがそんなにないなぁとその時感じたんですよね。でもそういうことだけではなくて現地で普通に商品を売ってくれるだけで元気が出るといった声を聞いたんです。あぁそっかと。グッズだけど、みんなの気持ちの中に入っているんだなぁとその時思って。「たかがグッズ、されどグッズ」だなと。Giftさんも、ずっとお客様のニーズに答えるというか、付加価値を創出しているところがユーザーに伝わっているんでしょうね。

金子:まだまだなんですけどね。今後も追求して行きます。

内山田:最後に何かメッセージとかありますか?

金子:来年は今までとは違うアプローチで、みなさんに楽しんでもらえるようなことを考えています。みなさんにどう思っていただけるかはわからないのですが…。まだ考え中で…う~ん、わからないけど今までになかった形で。楽しみにしていてください。

内山田:それは楽しみです。今日はありがとうございました。

金子:こちらこそ、ありがとうございました。