千代田区隼人町にある国立劇場は、1966年に竣工され早や半世紀。
歌舞伎や日本舞踊などが上演される大劇場と、文楽や邦楽などが上演される小劇場をもち、さらには、落語や漫才などがかかる国立演芸場が隣接しています。
学生の頃、伝統芸能を学ぶ授業で「歌舞伎鑑賞教室」を選んだ際に、初めて国立劇場を訪れました。国立という名前がついていること、そして授業の一環だったこともあり、なんだか堅苦しい印象を持った記憶があります。
それから数十年経って、まさか足しげく通うことになろうとは。
大劇場の開放的なロビーに入ると、正面奥にある平櫛田中作「鏡獅子」の彫刻が、出迎えてくれます。以前はロビー中央にあったそうですが、2メートルの大作の迫力は、いつ見ても圧巻です。
天井には華やかなシャンデリア。梵天をかたどっているそうで、私は2階フロアから見上げるのが大好きです。ロビーには、売店や無料休憩所、ベンチソファがあり、幕間の息抜きには困りません。食堂や喫茶では、お腹を満たすこともできます。
約1,500席ある大劇場ですが、ぱっと見では、そんなに大きいとは感じません。決して小さいわけではないのですが、ちょうどいい空間におさまっているという印象です。
歌舞伎の舞台構造が独特なのかもしれませんが、間口が広く、舞台と客席が左右に広がっているため、舞台を近くに感じることができます。おかげで、3階席後方(三等席)でも、舞台も花道もよく見えます。
ところで、客席から舞台がよく見えるということは、舞台からも客席がよく見えるのでは…?🙄
そんな疑問を解消してくれるかのように「3Dバーチャル 国立劇場VR」では、舞台上から客席の様子を見ることができます。VR専用メガネがなくても、3Dビューだけでも十分楽しむことができ、黒御簾や舞台裏、楽屋口も見られるので、公開されたときは、時間を忘れて没頭しました。
ちなみに歌舞伎では、客席の照明を落とさないまま上演することがよくあります。よりいっそう舞台から客席がよく見えるため、寝ているお客さんはわかるそうです。このあたりも歌舞伎独特…?
また、いわゆる歌舞伎っぽさの代表のひとつとして、三色の「定式幕」があります。
国立劇場では、左から【黒・萌葱色・柿色】となっていますが、歌舞伎座では順番が変わり、左から【黒・柿色・萌葱色】に、江戸時代の芝居小屋を再現した「平成中村座」では、左から【黒・白・柿色】となっています。
同じ歌舞伎を上演する場所にも、少しずつ違いがあることを、通っているうちに知っていきました。
そんな国立劇場ですが、建て替えのため、2023年10月にいったん閉場します。現在の姿とはお別れです。再開場は、2029年秋とのこと。
来秋までの「さよなら公演」を存分に楽しみ、初代国立劇場を満喫しようと思います。